リヒテル&ムーティ&フィルハーモニア管によるモーツァルトのピアノ協奏曲第22番を聴いて

リヒテル&ムーティ&フィルハーモニア管によるモーツァルトのピアノ協奏曲第22番(1977年録音)を聴いてみました。

リヒテルとムーティが共演してのセッション録音は、手持ちのCDに収められているベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番と、このモーツァルトの2曲のみ。ともに1977年の録音になります。
この年、リヒテルは62歳、ムーティは36歳。巨匠のピアニストと、躍進目覚ましい新進の指揮者との共演ということで、話題になったものでした。

さて、この演奏を聴いての印象であります。
リヒテルらしい、毅然とした演奏ぶりが示されている。凝縮度が高くもある。堂々としていて、揺るぎのない音楽が奏で上げられています。
モーツァルトのピアノ協奏曲の中では、第25番と並んで、気宇の大きさが目立つ第22番。そのような、この作品の性格が、クッキリと描き出されています。
その一方で、やはりモーツァルトということもあるのでしょう、普段のリヒテルによる強靭な音楽づくりと比べると、柔らかみを帯びています。優美な演奏ぶりとなってもいる。
と言いつつも、そこはリヒテル。柔和な表情をしているというよりも、厳粛な佇まいをした音楽世界が広がっている。第2楽章などは、かなり内省的でもある。最終楽章も、モーツァルトならではの飛翔感が漂うというよりは、玄妙な空気に包まれた音楽となっている。この辺りに、リヒテルならではのモーツァルト演奏、という思いを強くします。
そのようなリヒテルに対して、若き日のムーティもまた、堂々たる演奏ぶりで応えています。じっくりと腰の据わっている演奏が展開されている。そのうえで、ムーティらしく、覇気の漲っている演奏となっている。

なんとも立派な、そして、味わい深さの感じられる、素晴らしい演奏であります。