バーンスタイン&イスラエル・フィルによるヒンデミットの≪画家マティス≫を聴いて
バーンスタイン&イスラエル・フィルによるヒンデミットの≪画家マティス≫(1989年録音)を聴いてみました。
なんとも鮮烈な演奏となっています。
バーンスタイン(1918-1990)が、この世を去る1年前に録音された当盤。最晩年での演奏が刻まれているということになりますが、若々しくて躍動感に満ちた演奏が繰り広げられています。実に明快でスカッとした演奏ぶりが示されてもいる。晩年の演奏に顕著であった、過度に遅いテンポが採られている、といったこともない。
全編を通じて、覇気が漲っていて、ハリの感じられる音楽が響き渡っています。
そのうえで、峻烈さのようなものが備わってもいる。この辺りは、ヒンデミットの音楽づくりにも大いに関連していると言えましょう。
その一方で、ヒンデミット特有のシニカルな側面は、バーンスタインの明快さの前に若干薄れているように感じられますが、激烈であり、厳かさは際立っている。そのうえで、艶っぽくもある。更に言えば、頗る情熱的で、音楽全体が熱くほてっている。
実にドラマティックで、かつ、雄大さを伴った音楽が鳴り響いています。そして、生命力に溢れ、表情も豊か。
胸のすく、素敵なヒンデミット演奏であります。