ベーム&ベルリン・フィルによるベートーヴェンの≪ミサ・ソレムニス≫を聴いて
今日は、ベートーヴェンの命日。この日には、なるべくベートーヴェンの≪ミサ・ソレムニス≫を聴くようにしています。
ということで、ベーム&ベルリン・フィルによる音盤(1955年1月 録音)で聴いてみました。
なんとも立派な演奏であります。
悠然とした足取りで、ベートーヴェンが描いた音楽世界を丹念に再現してゆくベーム。堅固にして、重厚な演奏が繰り広げられている。この演奏を聴いていますと、巨大で壮麗な建造物が築き上げられてゆく様を見ているかのような思いに駆られます。
録音当時、ベームは60歳。壮年期のベームならではと言いましょうか、壮健で、覇気が漲っていて、かつ、威風堂々たる音楽が奏で上げられています。
しかも、演奏全体に厳粛な雰囲気が漂っている。
それでいて、過度にかしこまっておらずに、ある種、晴朗でもある。実直な演奏ぶりが示されていることによって、明快な演奏になっているとも言えそう。それ故に、意外な表現になるかもしれませんが、ピチピチとした若々しい勢いのようなものが感じられもします。そう、力感に溢れていて、生命力が豊かで、骨太で逞しい演奏となっている。例えば、「グローリア」などでは、意気軒昂で輝かしい音楽が鳴り響いている。一方、「ベネディクトゥス」では、厳粛にして清浄で、そのうえで、平安にして宏壮な音楽世界が広がっている。「アニュス・デイ」の前半部分などは、まさに荘厳にして重々しい音楽となっている。
独唱陣はと言えば、清らかなシュターダー(ソプラノ)、深々としたラデフ(メゾ・ソプラノ)、格調高いデルモータ(テノール)、威厳に満ちたグラインドル(バス)と、こちらも実に素晴らしい。特に、シュターダーとデルモータが、ずば抜けて魅力的だと思います。
合唱も、堂々としていて、誠に立派。
ズシリとした手応えがあり、凝縮度が頗る高くありつつも、気兼ねのいらない、打ち解けた気分に包まれている演奏。
いやはや、なんとも見事な演奏であります。