アンドリス・ネルソンス&バーミンガム市響によるチャイコフスキーの≪悲愴≫を聴いて

アンドリス・ネルソンス&バーミンガム市響によるチャイコフスキーの≪悲愴≫(2010年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

現在、ボストン響とライプツィヒ・ゲヴァントハウス管のシェフを兼任しているA・ネルソンスでありますが、2008年に29歳でバーミンガム市響の首席指揮者に就いており、当盤はその2年後に録音されたものになります。
その演奏はと言いますと、ケレン味のないものとなっています。目鼻立ちがクッキリとしていて、明快で、かつ、流動感に溢れている。そのために、冴え冴えとした音楽が鳴り響くこととなっている。過度に感傷的になるようなことはなく、音楽が粘るようなこともなく、とても端正な演奏となってもいる。
しかも、例えば第1楽章の展開部などでは、速めのテンポが採られていて、鮮烈で敏捷性が高くて、切れ味の鋭い演奏が展開されています。
そのようなこともあって、ドラマティックにして流麗な音楽が奏で上げられています。洗練味が感じられもする。率直な音楽づくりが為されていて、颯爽としてもいる。とりわけ、第3楽章は、実に颯爽としている。
更には、最終楽章では、頗る切実な音楽が鳴り響いています。シッカリと歌い込んでもいる。なおかつ、適度に煽情的でもある。とは言うものの、過度に濃厚になるようなことはなく、清潔感が保たれている。
そんなこんなのうえで、チャイコフスキーでの演奏に相応しく、抒情性にも不足はない。決して濃密に過ぎるようなことはないものの、すっきりとしたロマンティシズムが感じられます。それは、明朗なロマンティシズムだとも言えそう。

純音楽的な美しさを湛えている≪悲愴≫。それは、A・ネルソンスの瑞々しい感性と、類稀な音楽性が滲み出ている結果なのだと言いたい。
聴き応えが十分であり、そのうえで、清々しさを覚える、素敵な≪悲愴≫であります。