ホロヴィッツによるラフマニノフのピアノ協奏曲第3番を聴いて
ホロヴィッツ&オーマンディ&ニューヨーク・フィルによるラフマニノフのピアノ協奏曲第3番を聴いてみました。
この音盤は、1978年1月8日にホロヴィッツのアメリカ・デビュー50周年を記念してカーネギーホールで開催された演奏会をライヴ録音した、とてもモニュメンタルなものとなっています。
ちなみに、ホロヴィッツのアメリカデビューは、1928年1月12日、ビーチャム&ニューヨーク・フィルとのチャイコフスキーのピアノ協奏曲第1番で、会場はこの日と同じカーネギーホールだったとのこと。
硬質で澄み切った響きをベースにしながら、切れのあるテクニックを駆使して、豪壮で強靭で奔放で、それでいて丹念な演奏を展開してゆくホロヴィッツ。音楽がベトつくようなところは微塵もない。毅然とした音楽が繰り広げられてゆく。何と言いましょうか、決然としていて、ダンディズムのようなものが感じられる。それは、第1楽章の冒頭部分を聴いただけでも明らかだと言えましょう。強固な意志に支えられながら、決然と音楽は開始される。
その一方で、第1楽章の真ん中あたりや終結部の頭の部分や、更には第2楽章の多くの場面においては、随分と内省的な音楽を聞かせてくれています。そして、全体的に、とても洗練された音楽となっている。第3楽章の真ん中あたりでの軽やかなパッセージが続く場面では、キラキラと光り輝くような煌びやかな音楽を聴くこともできる。
そのうえで、決して感傷的になる訳ではないのですが、ラフマニノフ特有のめくるめくようなロマンティシズムがシッカリと感じられもする。音楽が存分にうねってもいる。ここで触れました「うねり」の大きさは、演奏が備えている強靭さとともに、ライヴならでは感興の迸り故なのでありましょう。それでいて、音楽のフォルムが崩れるようなことが全くないのは、驚くばかりであります。
いやはや、なんとも見事なピアノであります。
そのようなホロヴィッツを、要所を締めた音楽づくりで華麗かつ端然とサポートしてゆくオーマンディもまた、実に見事。
ただ単に、ホロヴィッツのアメリカ・デビュー50周年を記念した演奏会の記録であるということのみに価値がある訳ではない、聴き応え十分な立派な演奏であると思います。
このようなライヴ録音が残されていることに、感謝感謝であります。