カラヤン&ベルリン・フィルによるヒンデミットの≪画家マティス≫を聴いて

カラヤン&ベルリン・フィルによるヒンデミットの≪画家マティス≫(1957年録音)を聴いてみました。

カラヤンらしい巧緻な演奏であります。スタイリッシュでもある。
更に言えば、なんともゴージャスな演奏となっている。流麗でもある。光沢があって、艶やかで、滑らかでもある。
見通しがスッキリとしていて、何もかもが明瞭な演奏だと言えましょう。音楽がスムーズに進んでゆく。そして、エネルギッシュで、ドラマティック。
そのような演奏ぶりによって、ヒンデミットならではの力感溢れた音楽世界が、生き生きと、かつ、精妙に描き出されてゆく。それはもう、壮麗にして、見目麗しいヒンデミット演奏となっている。
そのうえで、1950年代から60年代の初頭辺りのカラヤンに特有の、瑞々しさや、真っすぐなひたむきさのようなものが、この演奏からもシッカリと感じられます。実に伸びやかで、しなやかな演奏となっている。溌剌としていて、躍動感に満ちてもいる。
そう、後年のカラヤンによる演奏で見受けられるような、厚化粧であったり、過度に濃厚な音楽であったり、といったものにはなっていない。私には、そんなふうに感じられます。

この作品の音楽世界に安心して身を浸すことのできる、なんとも見事な、そして、実に魅力的な演奏であります。