コリン・デイヴィス&ベルリン・フィルによるホルストの≪惑星≫を聴いて

コリン・デイヴィス&ベルリン・フィルによるホルストの≪惑星≫(1988年録音)を聴いてみました。

これは、C・デイヴィスがベルリン・フィルとセッション録音した、唯一の記録となるのではないでしょうか。また、当録音の14年後にロンドン響とのライヴ録音がLSOレーベルから出ていますが、C・デイヴィスにとっては≪惑星≫の唯一のセッション録音盤となります。
さて、ここでの演奏はと言えば、英国人としてのデイヴィスの血が騒ぐのでしょう。スケールが大きくて、雄渾で、生き生きとしていて刺激的で、適度に熱くて、しかも緻密で、情感豊かで、コクの深い演奏が展開されています。
冒頭の「火星」からして、力感に溢れている、逞しい音楽が繰り広げられてゆく。動きがキビキビとしていて、勇ましくて、エネルギッシュ。それでいて、騒々しかったり、軽々しかったり、といった音楽にはなっていません。足が地に着いた音楽となっていて、コクの深さが感じられる。そう、恰幅が良くて、風格豊かな音楽が鳴り響いているのであります。
続く「金星」は、抒情性が豊かで、キリっとしていつつも潤いがあって、美麗な演奏が展開されてゆく。「水星」は、躍動感がありつつも、浮ついたところはない。そのうえで、しっとりとした美しさの感じられる演奏となっている。「木星」は、気宇が大きくて、ダイナミックでありつつも、大騒ぎする演奏とはなっておらずに、腰の据わった音楽が鳴り響いている。
かような演奏が、その後も続いてゆく。そこに底通しているもの、それは、美感に溢れた音楽づくりが為されているということ。そして、活き活きとしていて、かつ、貫禄タップリな音楽となっているということ。
そのようなデイヴィスに対して、ベルリン・フィルもまた、決して派手にガンガンと音を鳴り響かせている訳ではないのですが、頗る巧くって、充実感がいっぱい。

「大人の惑星」、そのような言葉がピッタリの、聴き応え十分な演奏。
なんとも見事で、そして、魅力的な演奏であります。