アクセルロッド&京響の演奏会を聴いて

今日は、アクセルロッド&京響の演奏会を聴いてきました。演目は、下記の3曲。
●ガーシュイン ≪パリのアメリカ人≫
●コルンゴルト ヴァイオリン協奏曲(独奏:三浦文彰さん)
●ストラヴィンスキー ≪春の祭典≫

2020年から京響の首席客演指揮者を務めているアクセルロッドがタクトを執る演奏会。本日の演奏会で、首席客演指揮者の任を退くとのこと。 このコンビの実演は、一昨年に≪英雄の生涯≫をメインに据えた演奏会、昨年のマーラーの≪復活≫を採り上げた演奏会に続いて、3回目になります。これまでの2つでは、実に見事な演奏を聞かせてくれていただけに、今回はどのような演奏になるのか、とても楽しみであり、かつ、首席客演指揮者として最後のステージになるのが寂しくもありました。
演目も、一昨日に日本センチュリー響で聴いたコルンゴルトのヴァイオリン協奏曲に、≪春の祭典≫、≪パリのアメリカ人≫が含まれるという、魅力的なもの。期待に胸を膨らませながら、会場へと向かったものでした。

ところで、ここ数日の京都は、20℃を超えるポカポカ陽気が続いています。それはもう、春が到来したかのよう。演奏会場への道すがら、北野天満宮や一条戻橋などに寄ってみました。
北野天満宮は、本殿前に植えられているご神木の「飛梅」が満開、一条戻橋では、早咲きの河津桜が満開となっていました。一条戻橋の桜は、1本だけ植わっているのですが、濃いピンク色の花をタップリと付けていて、実にゴージャス。華やいだ気分を存分に味わうことができました。

北野天満宮の飛梅

さて、それでは、演奏会を聴いての印象について。
≪パリのアメリカ人≫と≪春の祭典≫が、期待を上回る素晴らしさでありました。アクセルロッドならではの、音楽性の豊かな演奏。そんなふうに言えましょう。
まずは、≪パリのアメリカ人≫から。
音楽の息遣いが、極めて自然な演奏ぶり。そのため、流れが滑らかで淀みがなく、音があるべきところに収まっていた。そして、力感に溢れていて、生き生きとしていた。
それでいて、全く大騒ぎになっていない。折り目正しくて、格調の高い演奏。あまりガーシュインらしくないと言えそうですが、純音楽的な美しさを湛えた演奏が繰り広げられていたのであります。しかも、この曲ならではの、聴いていてウキウキしてくる演奏ぶりとなっていた。哀愁を漂わせる場面では、哀切タップリな演奏を繰り広げていた。
目鼻立ちがクッキリとしていて、やるべきことをシッカリとやり尽くしていた演奏。このような演奏、大好きであります。
続くコルンゴルトは、不満の残る演奏でありました。それは、三浦さんの独奏に依るもの。
三浦さんの実演を聴くのは、これが数回目になりましょうか。そのいずれもが、音楽の押し出しが弱くて、ひ弱な演奏という印象だったのですが、それは、今日のコルンゴルトにおいても同様でした。
なるほど、折り目正しくある。音に艶やかさが感じられもする。しかしながら、音楽を表面的になぞっているような印象を抱いてしまう。音楽が、こちらの手元にまで届いてこない、というもどかしさを感じてもしまう。そんなこんなによって、音楽に触れる「歓び」が薄い演奏になってしまっていた。
アクセルロッドは、コルンゴルトでも、精妙で鮮やかな音楽づくりを展開してくれていただけに、三浦さんの演奏ぶりが残念でなりませんでした。

一条戻橋の河津桜

さて、メインの≪春の祭典≫について。
≪パリのアメリカ人≫同様に折り目正しい演奏でありました。しかも、頗る鮮烈。全ての音があるべきところに収まっていて、かつ、生気に溢れている。端正にして、エネルギッシュで、ドラマティックでもあった。
アクセルロッドのタクトさばきは、無駄がなく、かつ、明快そのもの。迷いが一切なく、確信に溢れていました。切れ味が鋭くもあった。そのことによって、京響から一糸乱れないアンサンブルを引き出していた。音楽が、ビシバシと決まってゆく。
そのようなアクセルロッドの指揮に、献身的に応えてゆく京響も、見事の一言。京響が、ここまでの名技性を発揮するとは、驚きでありました。
いったい、これ以上、何を望めましょうか。一昨年に、このコンビによる≪英雄の生涯≫を聴いた際にも、こんなにも素晴らしい≪英雄の生涯≫の実演には、滅多に巡り会えないだろうと感じたのですが、それは、本日の≪春の祭典≫でも当てはまる。このような≪春の祭典≫、そうそう聴けるものではありません。ワールドクラスの演奏だったと言いたい。
こんなにも見事な≪春の祭典≫を、我が町で聴くことができるとは、何と幸せなことなのでしょうか。その喜びを嚙みしめて、惚れ惚れしながら聴いていたものでした。

このような演奏を聞かされると、アクセルロッドの退任が残念でなりません。首席客演指揮者を降りても、今後も京響の指揮台に登ってくれることを、切に望みます!!
ところで、プログラム冊子に、アクセルロッドからの退任メッセージが掲載されていましたので、そちらの写真も掲載致します。
「おおきに」で始まる、素敵な文章。アクセルロッドの暖かな人間味や、旺盛なサービス精神を垣間見させてくれる思いでもあります。