テンシュテット&ベルリン・フィルによるシューマンの≪ライン≫を聴いて

テンシュテット&ベルリン・フィルによるシューマンの≪ライン≫(1978年録音)を聴いてみました。

当盤は、旧東ドイツで活動していたテンシュテット(1926-1998)が、1971年に初めて東ドイツ国外に出て西側での演奏活動を開始し、声望を高めていっていた時期のものになります。以前に、協奏曲のバックをつけた音盤が発売されていましたが、本格的な日本デビュー盤となりました。
録音当時、テンシュテットは52歳。超ベテランの新人指揮者という言い方をされて、話題になったものでした。
(こちらの前に、ロンドン・フィルとのマーラーの≪巨人≫が録音されていましたが、日本での発売は、当盤のほうが先でした。)

テンシュテットらしい、燃焼度の高い演奏となっています。音楽が存分にうねってもいる。それらによって、シューマン特有の「熱狂」がシッカリと描き出されている。
しかも、ベルリン・フィルならでは厚みのある響きによって、充実度の高い音楽が展開されている。覇気があって、グイグイと押してゆく演奏ぶりありつつも、重心が高くなるようなことはなく、ドッシリと構えた音楽鳴り響いているのであります。
そのうえで、この作品に相応しい、明朗さの備わっている演奏となっている。過度に派手にならない範囲で輝かしくもある。その一方で、第4楽章では、暗鬱とした音楽が奏で上げられていて、殊のほか地に足をつけた音楽づくりが示されている。それでもやはり、この楽章においても、「内に秘めた情熱」のようなものが感じられるところが、いかにもテンシュテットらしいと言えましょう。

テンシュテットの魅力、ベルリン・フィルの魅力、そして、この作品の魅力をタップリと味わうことのできる、素敵な演奏であります。