ブロムシュテット&バイエルン放送響によるモーツァルトの≪ジュピター≫を聴いて

ブロムシュテット&バイエルン放送響(BRSO)によるモーツァルトの≪ジュピター≫(2017年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音源での鑑賞になります。

ブロムシュテットらしい、誠実な演奏が繰り広げられています。キリっと引き締まっていて、清々しくもある。
その一方で、以前のブロムシュテットによる演奏に比べると、剛毅な雰囲気が備わっています。優美というより、勇壮な演奏となっている。いや、「壮健」と言ったほうが相応しいかもしれない(とりわけ、第3楽章の演奏ぶりは、壮健という表現がピッタリな健やかさがあります)。両端楽章などは、壮麗にして輝かしくもある。
そのうえで、キビキビとした運動性が備わっている。音楽に曇りがなく、晴朗で、清潔感が漂っている。そして、暖かみが感じられる。この辺りは、これまでに慣れ親しんできたブロムシュテットによる演奏と共通した性格だと言えましょう。
そのようなブロムシュテットの音楽づくりに対してBRSOは、機能性の高さがヒシヒシと感じられる緻密な合奏や、贅肉を過ぎ落としたスリムでニュートラルな響きや、粒の揃った音たちによる明瞭な音像や、鋭敏な反応や、といった演奏ぶりを示していて、ここでの演奏が、より一層引き締まったもの、かつ、見通しの良いものとなっている。

従来からのブロムシュテットの魅力と、ブロムシュテットの新たな側面とを垣間見ることのできる演奏。しかも、壮麗で剛健な演奏ぶりは、この作品が備えている性格に誠に似つかわしい。
聴き応え十分な、素敵な演奏であります。