ボスコフスキー&ウィーン・モーツァルト合奏団によるモーツァルトのディヴェルティメント第17番を聴いて

ボスコフスキー&ウィーン・モーツァルト合奏団によるモーツァルトのセレナード全集からディヴェルティメント第17番(1973年録音)を聴いてみました。

このセットは、便宜上『セレナード全集』と銘打たれていますが、モーツァルトが作曲したセレナード、ディヴェルティメント、カッサシオンなどの機会音楽のうち、管楽器のみで編成された作品を除いた全てを収めよう、という意図のもとに制作されたものになります。例えば、≪音楽の冗談≫も、ここには収められている。
ここで指揮をしているのは、ウィーン・フィルのコンサートマスターであり、ニューイヤー・コンサートの指揮も執っていたボスコフスキー。そのボスコフスキーがウィーン・フィルの仲間と語らって、このモーツァルト集を録音するために編成されたのが、ウィーン・モーツァルト合奏団であります。

さて、ここでのディヴェルティメント第17番の演奏について。
ウィーン情緒を感じさせてくれる優美な演奏であります。爽快感に溢れてもいる。
しっとりとしていて、甘美で、かつ、艶やかな演奏ぶりが示されています。そのうえで、誠に清々しい演奏が繰り広げられている。そう、清涼感が実に高いのです。無垢な清らかさが感じられもする。
更に言えば、落ち着いた雰囲気の中にも溌剌とした愉悦感が備わっています。幸福感に満ちていて、暖かみがあって、音楽がふくよかさを帯びてもいる。そして、ときに、ちょっぴり物憂げでもある。
この演奏で描かれてゆく、そんなこんなの音楽世界が、この作品の性格にピッタリだと言えましょう。

もう少し疾走感があっても良かったのでは、と思わなくもありません。そう、おっとりとし過ぎているかな、と感じられるのであります。と言いつつも、息遣いが自然で、伸びやかな演奏が展開されています。ギャラントな雰囲気にも不足はない。そして何よりも、モーツァルトを聴く歓びをタップリと味わわせてもらえる演奏となっています。
それにしましても、モーツァルトの手によって生み出されたディヴェルティメントやセレナードといった機会音楽、実に魅力的ですよね。そのことを改めて強く感じさせてくれる、素敵な素敵な演奏であります。