ツィマーマン&小澤さん&ボストン響によるリストのピアノ協奏曲第1,2番と≪死の舞踏≫を聴いて

ツィマーマン&小澤さん&ボストン響によるリストのピアノ協奏曲第1,2番と≪死の舞踏≫(1987年録音)を聴いてみました。


凛としていて、かつ、剛毅な演奏であります。
知性溢れるツィマーマンと、雄渾で充実感いっぱいな音楽を奏で上げてくれている小澤さん。聴き応え十分な、見事な演奏となっています。
ツィマーマンは、いつもながらの、コントロールの行き届いている演奏を繰り広げてくれている。一貫して、筋肉質でキリリと引き締まった音楽が鳴り響いています。表情が毅然としてもいる。
しかも、テクニックの切れは抜群で、音の粒がクッキリとしていてムラがない。響きは硬質にして、透明感を持っている。打鍵は、時に力強く、時に繊細。そのニュアンスの幅の、なんと大きなこと。
そのうえで、全ての音が、感じ切ったうえで鳴らされている、という印象が強い。そう、実に感受性の豊かな音楽が鳴り響いているのであります。それでいて、充分にダイナミックで、壮麗でもある。燦然たる音楽世界を創出してゆくような演奏ぶりだとも言いたい。
そのようなツィマーマンをバックアップしている小澤さんによる指揮は、決して重苦しい訳ではなく、颯爽としているのですが、音に分厚さが感じられます。しかも、身のこなしがしなやか。アグレッシブな演奏ぶりで、熱気を帯びていて、生き生きとした表情を湛えている。輝かしくもある。そのうえで、小澤さんらしい端正な音楽づくりが窺えもする。そう、どこにも誇張がなくて、実直な音楽が奏で上げられている。
そのような演奏ぶりが、ここでのツィマーマンのピアノにピッタリであります。
1980年代以降の小澤さんの演奏には、時に「優等生的」に過ぎていて面白味の薄さを感じ、物足りなさを覚えることもある私なのですが、ここでの演奏ぶりには大いに惹かれます。

独奏者と指揮者とのマッチングの妙を、享受することのできる演奏。それは、協奏曲というジャンルが持っている醍醐味の一つでもありましょう。
私にとっては、リヒテル&コンドラシン盤とともに(もっとも、こちらには≪死の舞踏≫は含まれていませんが)、トップクラスで強く惹かれるリストのピアノ協奏曲集の音盤。
いやはや、惚れ惚れするほどに素晴らしい、なんとも魅力的な演奏であります。