ベーム&ウィーン・フィルによるブラームスの交響曲第1番(1975年の東京ライヴ)を聴いて
ベーム&ウィーン・フィルのコンビの初来日となった1975年のライヴ集から、ブラームスの交響曲第1番(1975/3/22 NHKホール)を聴いてみました。
これは、ベーム&ウィーン・フィルのコンビが初めて日本を訪れ、NHKホールで催された7回の演奏会の中の記録の一つになります。
このコンビの初来日は、日本の音楽界にとってはまさに大事件。日本中の音楽愛好家から、熱い視線が送られたようです。そして、7回の演奏会は、今や伝説となっている。
さて、ここでの演奏はと言いますと、なんとも凝縮度の高いものとなっています。
なるほど、NHKホールのデッドで残響の少ない音響が気にはなりますが、ウィーン・フィルならではの、ふくよかで柔らかい響きの向こうから、逞しくて、集中度の高い音楽が響き渡ってきています。それは、壮健で、かつ、謹厳な音楽であるとも言えそう。
そのうえで、燃焼度が高い。ここには、ライヴだからこその気魄が感じられます。そして、音楽がうねりにうねっている。音楽にシッカリとした流動感が備わっている。気宇が大きく、力感が漲っている。激情的であり、しかも、ロマンティックな色合いを湛えてもいる。そういった様はまさに、ブラームスの音楽に相応しい。
そのような中で、第2楽章の全編を通じて、或いは第3楽章の中間部の最初の辺りなどでは、憂いを帯びた表情を見せたりしている。抒情性が深くもある。それがまた、演奏に奥行きを与えてくれている。
そんなこんなもあって、感興が豊かで、かつ、コクの深い演奏となっています。そして、音楽が示してくれている佇まいの、誠に美しい演奏となっている。
我が国でのクラシック音楽の演奏史において、メモリアルな価値を持っている演奏の、貴重な記録。
公演から半世紀近くが経ても、音盤によって、この演奏に触れることができることに感謝の念を抱かずにはおれません。