ホグウッド&エンシェント室内管によるハイドンの交響曲第31番≪ホルン信号≫を聴いて
ホグウッド&エンシェント室内管によるハイドンの交響曲第31番≪ホルン信号≫(1988,89年録音)を聴いてみました。
これは、ポリグラムが、ホグウッド、ブリュッヘン、ダントーネの3人の指揮者を起用して制作した、古楽器による初のハイドンの交響曲全集のうちの1枚。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。
この作品は、ハイドン(1732-1809)が1765年に作曲した交響曲。1760年代の中頃から1770年代の前半辺りにかけて、疾風怒濤(シュトゥルム・ウント・ドラング)と呼ばれる作風を示すことの多いハイドンでありますが、この交響曲も、まさにその特徴が現れていると言えましょう。「颯爽とした風」を感じることができる音楽となっています。
なお、ニックネームは、第1楽章が4本のホルンによる活気に溢れた吹奏(ホルン信号)で開始されることに依っています。(そしてそのホルンの吹奏は、最終楽章の最後の場面にも現れる。)
また、緩徐楽章となっている第2楽章でも、ホルンが大活躍する。
さて、ここでの演奏の印象はと言いますと、何とも清々しいものとなっています。清新さに溢れた演奏となっている。
この作品に相応しい、溌剌とした演奏が繰り広げられている。しかも、キリッと引き締まっていて、清潔感に満ちている。或いは、不純物が一切含まれていなくて、透き通るような清らかさが感じられる、といった類の演奏であるとも言えそう。
更には、伸びやかで、輝かしくて、鮮やかさを備えている演奏だとも言いたい。音楽全体が弾みに弾んでいる。しかも、恣意的な表現は一切見られず、実に真っすぐな音楽づくり。鋭敏であり、かつ、頗る真摯な演奏ぶりでもある。そんなこんなによって、隅々まで明快で、造形のくっきりとした音楽が鳴り響くこととなっています。
しかも、古楽器の音色がまた、ピュアで、清新そのもの。清涼感に満ちたものとなっている。
聴いていて幸福感に包まれてくる、素敵な素敵な演奏であります。