スウィトナー&シュターツカペレ・ベルリンによるドヴォルザークの交響曲第8番を聴いて
スウィトナー&シュターツカペレ・ベルリン(SKB)によるドヴォルザークの交響曲第8番(1977年録音)を聴いてみました。
スウィトナー&SKBのコンビは、1970年代の後半から1980年代の前半にかけて、ドヴォルザークの交響曲全集を完成させており、これは、そのなかの1枚。
オーストリアのインスブルックに生まれたスウィトナーは、モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、ブラームス、ブルックナーといったドイツ音楽を得意としていた指揮者というイメージが強いかと思いますが、ドヴォルザークもよく採り上げていました。ちょうどドヴォルザークの交響曲全集を制作中だった1978年にSKBと来日した折には、ブラームスの交響曲第1番との組合せで同曲を演奏しています。
ちなみに、この中の大分公演を聴きに行っておりまして、これが、私にとって初めての外来オーケストラの実演体験であります。そのために、強い印象の残っている来日公演。私が聴いた演奏会はモーツァルトの最後の3つの交響曲をプログラミングしたものだったのですが、「Dプロ」としてドヴォルザークの交響曲第8番を全国で5回演奏しています。そのことによって、私の中では、スウィトナーとドヴォルザークの交響曲第8番とは、分かちがたいものとなっています。なお、このときの来日公演では5つのプログラムが用意されていますが、ドイツ音楽以外の作品がプログラミングされているのは、この曲のみでありました。
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さて、この音盤を聴いての印象であります。
スウィトナーによる演奏は、誠実さを前面に押し出しながら、端正な音楽を鳴り響かせてゆく、といった傾向が強いように思えます。どちらかと言えば、穏当な音楽づくりが多いとも言えそう。そのうえで、格調の高い、至純な演奏を繰り広げてくれていた。
そこへ行きますと、この演奏は、かなりアグレッシブなものとなっています。ホットで、燃え滾るような音楽づくりが為されている。
もちろん、多くの演奏家がそうであるように、スウィトナーも情熱家であったことでしょう。ただ、それは「内に秘めた熱さ」として示されることが多かったように思えます。しかしながら、この演奏では、その「熱さ」が前面に出ている。このことはすなわち、この作品への愛情の、ストレートな吐露でもあるのでしょう。
その熱さは特に、第1楽章の終結部において顕著であります。大きな昂揚感を築かれている。そして音楽は驀進してゆくような様相を呈している。
しかも、スウィトナーらしい誠実さや堅実さの感じられる演奏となっています。どんなに熱くなっても、メーターを振り切って過度に音楽を煽り立てるようなことはない。ましてや、音楽が空転するようなことはない。凝縮度の高い演奏が繰り広げられています。そのうえで、コクの深さの感じられる音楽づくりが為されている。この辺りは、SKBの体質や古雅な響きに依るところも大きいと言えそう。
知情のバランスに優れている、素敵な演奏。
感興豊かで、かつ、味わい深い、素晴らしい演奏であります。