クナッパーツブッシュ&ミュンヘン・フィルによるR・シュトラウスの≪ドン・キホーテ≫を聴いて

クナッパーツブッシュ&ミュンヘン・フィルによるR・シュトラウスの≪ドン・キホーテ≫(1958年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

なんとも武骨な演奏であります。
この演奏からは、ドン・キホーテ的な性格(破天荒であったり、ユーモラスであったり)といったものは、ほとんど感じられません。なるほど、猪突猛進的な性格を感じ取ることはできますが、それは、非現実な妄想から行動を起こすといったようなタイプではなく、現実を見定めたうえで確信を持ちながら突き進んでゆく、といった人物像が見えてくるような演奏だと言いたくなる。しかも、飾りっけの全くない形で、ただひたすらに突き進んでゆく、といった逞しさが感じられる。
そのうえで、煌びやかな華麗さを持ったR・シュトラウス演奏が展開されているというよりも、壮大なスケールを持った音楽を真摯に奏で上げてゆく、といった演奏が繰り広げられている。そう、クナッパーツブッシュの演奏でよく見受けられる「異形の音楽」が、ここでも鳴り響いているのであります。
それでいて、「媚びを売らない艶やかさを備えたロマンティシズム」とでも呼べそうなものが滲み出てくるところは、クナッパーツブッシュが指揮するワーグナーのオペラ演奏に共通していると言えそう。

クナッパーツブッシュならではの音楽世界が広がっていて、しかも、実に立派で聴き応えの十分な≪ドン・キホーテ≫。
ユニークな魅力を備えている、素敵な素敵な演奏であります。