バーンスタイン&ウィーン・フィルによるシベリウスの交響曲第1番を聴いて

バーンスタイン&ウィーン・フィルによるシベリウスの交響曲第1番(1990年録音)を聴いてみました。
バーンスタインが亡くなる8か月前の演奏になります。

晩年のバーンスタインの演奏と言えば、極端に遅いテンポが採られることが多いことと、情念的な演奏が多くなっていることが、特徴的であると言えましょう。
しかしながら、この演奏はさほど遅くはありません。なるほど、例えば第2楽章の多くの場面ではやや遅めのテンポが採られています。その結果、蜃気楼が揺らめくかのようなミステリアスな雰囲気が醸成されることとなっています。ところが、この楽章の後半部分は一気呵成に音楽を煽りながら荒れ狂ったような表情を見せたりもする。一方で、第3楽章では早めのテンポでリズミカルな様相を強調しながら、こちらは中間部でテンポをガクンと落として、情感豊かな色合いが加えてられてゆく。
かように、変幻自在のテンポが採られていきながら、晩年のバーンスタインらしい濃密な音楽が展開されています。と言いつつも、外観としては、とても若々しい演奏であると言えそう。

演奏全体を通じて言えること、それは、実に起伏の大きな演奏であるということ。とにかくアグレッシブで熱い。ここには北国の涼しげな雰囲気は殆ど感じられません(もっとも、シベリウスの音楽には、本来的に熱いものが宿っていると考えているが)。全編を通じて、音楽が熱狂しています。感情移入の度合いも半端なものではありません。そのうえで、しなやかで、よく歌う。
加えまして、ウィーン・フィルの艶やかな美音が、ここでも堪らないほどに魅力的。強奏の場面ではパワー全開で鳴らし切っているのですが、美感が全く失われていない。オーケストラ美の極致をゆくような演奏であると言えましょう。

ユニークなシベリウスだと呼ぶべきかもしれませんが、途方もなく魅力的な演奏であります。