スウィトナー&シュターツカペレ・ベルリンによるシューベルトの≪ロザムンデ≫組曲を聴いて

スウィトナー&シュターツカペレ・ベルリン(SKB)によるシューベルトの≪ロザムンデ≫組曲(1985年録音)を聴いてみました。

どこにもはったりのない、真摯な演奏となっています。質実剛健な演奏であるとも言えましょう。
どっしりと構えた演奏ぶりで、安定感が抜群。響きも充実を極めています。序曲では、スケールの大きさが示されている。そのうえで、全編を通じて、決然とした演奏が繰り広げられている。
とは言え、重苦しい音楽にはなってはいません。むしろ、晴朗な音楽世界が広がっていると言えそう。この作品が持っている、可憐な性格や、ロマンティックな感興や、ポエジーな雰囲気にも不足はない。そう、質実剛健でありつつも、可憐で情趣に富んだ演奏となっていると言いたい。
例えば、バレエ音楽第1番や、間奏曲第3番(このナンバーでは、シューベルトが度々転用した「ロザムンデのメロディ」が奏でられます)では、典雅な演奏ぶりが示されていて、夢見心地に誘われます。また、バレエ音楽第2番では、軽快という言い方には当たりませんが、一歩一歩を踏みしめるような歩みの中にも弾むような足取りの感じられる演奏ぶりとなっているのが、なんとも奥ゆかしくて、かつ、魅惑的。
そんなこんなによって、とてもチャーミングな演奏となっています。演奏全体を通じて、シューベルトらしい抒情性に満ちてもいる。更に言えば、清浄な音楽世界を見渡すような感慨を覚える。胸に染み入るような歌心に満ちている。
しかも、SKBの燻んだ響きがまた、なんとも魅力的であります。素朴なようでいて、エレガントな美しさが感じられる。奏でられている音に、計り知れない底力が感じられもする。そのようなSKBの美質が、ここでのスウィトナーの演奏ぶりと、シューベルトの作品に、いかにも相応しい。

立派な、そして、実に素敵な演奏であります。