バックハウス&イッセルシュテットによるベートーヴェンのピアノ協奏曲第4番を聴いて

バックハウス&イッセルシュテット&ウィーン・フィルによるベートーヴェンのピアノ協奏曲全集から第4番(1958年録音)を聴いてみました。

毅然としていつつ、情趣深い演奏であります。
ピアノ協奏曲第4番は、優美な味わいを持っている作品であると言えましょう。第5番が≪皇帝≫と名付けられていることに対して、この作品は、王妃と呼べるような性格を持っていると思えます。
そこへ行きますと、ここでの演奏は、かなり逞しさを持っているものだと言えそうです。「鍵盤の獅子王」と評されたバックハウスの強靭さを備えた演奏ぶりが、クッキリと現れている。グランドマナーの貫かれた、安定感充分で気宇の大きさが感じられる演奏だとも言えましょう。堅固な演奏となってもいる。
それでいて、この作品が持っている優しさが滲み出てもいます。大衆に迎合しない孤高の姿を映し出しているかの如き風情を漂わせていながらも、親しみに満ちてもいる。そして、薫り高くもある。
イッセルシュテット&ウィーン・フィルの演奏ぶりがまた、そのようなバックハウスの音楽づくりと見事にマッチしています。こちらもまた、充分に力強くて、かつ、薫り高さや気高さが感じられる。

なんとも立派な、そして、頗る魅力的な演奏だと思います。
なお、最終楽章のカデンツァでは、バックハウスの自作が弾かれています。これがまた、なんとも強靭な音楽となっていて、ここでの演奏に相応しい。