五嶋みどりさん&アバド&ベルリン・フィルによるチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲とショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番を聴いて
五嶋みどりさん&アバド&ベルリン・フィルによるチャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲とショスタコーヴィチのヴァイオリン協奏曲第1番(1995,97年録音)を聴いてみました。
図書館で借りてきたCDでの鑑賞になります。
MIDORIさんらしい、ストイックな演奏が繰り広げられています。頗る集中度の高い演奏になっている。ときに、瞑想するかのようようでもある。そのようなこともあって、求道者による音楽、といった雰囲気すら漂ってくる。
全体を通じて、隅々にまで神経の行き渡っている演奏だと言えましょう。表情が細やかであり、刻一刻と色合いを変化させてゆくような演奏となっている。
それはまるで、MIDORIさんの心の襞があらわになってゆく様を覗いているかのよう。演奏行為とは、多かれ少なかれ、このような要素を含んだものであると言えましょうが、MIDORIさんによる演奏には、その傾向が非常に強いように思えます。研ぎ澄まされた感性に裏付けられた演奏だとも言いたい。
それだけに、誠に陰影に富んだ演奏となっている。
その一方で、卓越したテクニックに支えられた演奏でもあり、必要十分な切れ味がある。しかしながら、それを表立って押し付けてくることはない。あくまでも、克明に音楽を掘り下げてゆくためだけの手段としての名技性が示されている。そんなふうに言いたくなります。
そんなこんなによって、純美な音楽が奏で上げられることとなっている。客観性が頗る高くもある。そのうえで、ショスタコーヴィチの方で特に顕著なのでありますが、緊張度の高い演奏が繰り広げられることとなっている。
そのようなMIDORIさんを、アバドはここでもガッチリとサポートしてくれている。しなやかにして堅固。更に言えば、明快な音楽づくりが為されている。しかも、感興豊か。合わせ物が得意であったアバドの、真骨頂を見る思いがします。
MIDORIさんの美質がクッキリと刻まれている、聴き応え十分で、聴き手を惹きつける力の絶大な演奏。
なんとも見事な演奏であります。