チョン・ミョンフン&エーテボリ響によるニールセンの≪アラジン≫組曲を聴いて

チョン・ミョンフン&エーテボリ響によるニールセンの≪アラジン≫組曲(1983年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。
チョン(1953-)は、30代半ばの1989年にパリ・オペラ座(バスティーユ歌劇場)の音楽監督に抜擢され、1990年にはドイツ・グラモフォンと専属契約を結ぶと、同オケとのメシアンの≪トゥーランガリラ交響曲≫を皮切りに数々の録音をリリースさせていき、一気にブレイクした感があります。
そのチョンは、パリ・オペラ座でのポストを掴む以前に、エーテボリ響とニールセンの交響曲や管弦楽曲、協奏曲といった作品をBISレーベルに録音しており(交響曲は第1,3,5,6番が録音され、全集に至ることはなかった)、当盤はその中の1枚になります。
さて、この≪アラジン≫組曲は、5幕物の演劇のために作曲された舞台付随音楽から、7つのナンバーを抜粋して編まれた組曲。題名からも想像できますように、アラビアンな雰囲気に包まれた、異国情緒溢れる音楽となっています。演奏時間は20分強。
そのような作品を、チョンは、エネルギッシュに、かつ、抒情味たっぷりに奏で上げています。明晰な演奏ぶりでもある。
例えば、第1曲目は、かなり賑々しい音楽となっています。個性的であり、かつ、親しみやすいメロディに彩られた、痛快な音楽でもある。ちょっぴり剽軽さを備えていつつ、どこかもの悲しくもある音楽だとも言えそう。その様は、道を練り歩く大道芸人の一団を思わせる。そのようなナンバーを、決して羽目を外すようなことはないものの、ダイナミックに奏で上げているチョン。
また、第6曲目では、ドラマティックな演奏が展開されている。第7曲目では、目まぐるしく舞いまわるかのような音楽が、生き生きとした表情を湛えながら奏で上げられている。
その一方で、チョンの美質が如実に現れているのは、リリカルな雰囲気を備えているナンバーにおいてであるように思われます。センチメンタルにして、感情豊かで詩的に、そして何よりも清廉な音楽づくりを施しながら奏で上げてくれている。なおかつ、凛とした音楽が鳴り響くこととなっている。とりわけ、ノスタルジックでアンニュイな雰囲気を湛えた第5曲(その雰囲気は、なんとなくバグパイプによる音楽のようでもある)では、ピンと張り詰めた空気が漂うこととなっていて、とても印象的。
あまりメジャーだとは言い切れないながらも、心惹かれるナンバーが並んでいる佳作の魅力を、タップリと味わうことのできる、素敵な演奏であります。





