ブーレーズ&クリーヴランド管によるドビュッシーの≪映像≫(CBS盤 1967年録音)を聴いて

ブーレーズ&クリーヴランド管によるドビュッシーの≪映像≫(1967年録音)を聴いてみました。

この時期のブーレーズならではの、巧緻で、明晰で、鋭敏な演奏が繰り広げられています。1990年代に同じくクリーヴランド管と再録音したものと比べると、エッジが立っていて、キリっと引き締まった演奏となっている。
総じて、透徹された音楽づくりが為されていて、ひんやりとした肌触りをしていると言えましょう。しかしながら、冷酷な演奏になっているかと言えば、さにあらず。音楽は充分に躍動していて、エネルギッシュでもある。そう、決して体温の低い音楽となっている訳ではないのです。
しかも、透き通るような音響をしていて、輪郭線がクッキリとしていて、音楽全体の見通しが良い。そして、彫琢が誠に深い。音楽全体が、決然としたものとなってもいる。
更に言えば、硬質な響きでありつつ、底光りするような輝かしさが備わっており、色彩感も充分。そのうえで、ドビュッシーらしい芳香も十分に感じられます。この辺りは、フランス人としてのブーレーズの面目躍如、といったところでありましょうか。そのようなこともあって、感覚的にも、しっかりとした「音楽を聴く歓び」をもたらしてくれる。

理知的でいて、ロマンティックな雰囲気も湛えているドビュッシー演奏。
聴き応え十分な、素敵な演奏であります。