グルダ&シュタイン&ウィーン・フィルによるベートーヴェンの≪皇帝≫を聴いて

グルダ&シュタイン&ウィーン・フィルによるベートーヴェンの≪皇帝≫(1970年録音)を聴いてみました。

清冽でいて、闊達な演奏となっています。
邪気のない、正統的な演奏ぶりが示されている。ウィーン伝統に根を生やした感性や、音楽づくりの結晶を見る思いをします。特に、オケがウィーン・フィルだというところに、その感を強くする要因があるように思われる。
そう、まずもって、ここでのオケの響きの「純粋な美」に、心が奪われる(耳が奪われる)のであります。そのうえで、シュタインの奇を衒わない指揮ぶりが、無垢な美を導き出してくれているとも言えそう。
そのようなオケと共に、グルダもまた、天衣無縫とも言える音楽を奏でてゆく。しかも、なんとも真摯な姿勢で。しかも、贅肉を削ぎ取ったような音楽が奏で上げられている。それ故に、極めて結晶度の高い演奏になっている。
なおかつ、抒情性に溢れてもいる。そして、なんとも凛とした音楽が鳴り響いている。
そんなこんなも含めて、グルダの研ぎ澄まされた感性に裏打ちされた演奏が繰り広げられていると言いたい。
更に言えば、この作品が持っているスケールの大きさや、壮麗さも十分に備わっている。煌びやかさにも不足はない。但し、この気品に満ちた演奏は、皇帝と言うよりも、どちらかと言えば女王陛下、と呼んだほうが相応しいように思えます。しかも、頗る麗しい女王陛下。

いやはや、なんとも見事な、そして、実に魅力的な演奏であります。