アバド&ベルリン・フィルによるヒンデミットの≪画家マティス≫を聴いて

アバド&ベルリン・フィルによるヒンデミットの≪画家マティス≫(1995年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。
なんとも流麗な演奏が繰り広げられています。仕上げが丹念であり、端正な音楽が鳴り響いている。
総じて、肌触りはとても滑らか。適度にダイナミックであり、適度に壮麗でもあります。更には、第1楽章では、適度な躍動感がある。終楽章では、厚みのある音楽となっている。それらが、整然と為されてゆく。なんの軋轢もなく。
そのために、とても聴きやすい演奏となっています。見通しが良くもある。
しかも、抒情的な美しさが感じられる箇所が多い。そして、全体を通じて艶やかさを湛えていて、美麗な演奏となっている。
また、終楽章のフガートの箇所では、頗るリズミカルに音楽が進められてゆく。しかも、ベルリン・フィルのアンサンブルは、とても精緻。
実に纏まりの良い演奏であります。それは、「優等生的」であるとも言えそう。
個人的には、もう少し葛藤があっても、そして、もっと荒々しさを秘めていても良いのではないだろうかと思ってしまいます。更には、もっと活力に溢れていて欲しいものだと思ってしまいます。しかしながら、「完成度」という点では、とても高い演奏になっていると思えます。
きっと、このような演奏を好む愛好家も多いのではないでしょうか。





