ペルルミュテールによるラヴェルの≪夜のガスパール≫を聴いて
ペルルミュテールによるラヴェルのピアノ曲全集から≪夜のガスパール≫(1973年録音)を聴いてみました。
ペルルミュテール(1904-2002)は、ラヴェル自身から、その作品の演奏について学んでいるピアニスト。そのようなこともあって、ラヴェル弾きとして広く認められていました。
さて、ここでの演奏ですが、堅固であり、かつ、シッカリとした様式感を持ったものとなっています。しかも、明晰な演奏でもある。決して重すぎることはないのですが、強くて逞しいタッチによって、音楽は紡ぎ上げられている。
録音の採り方にも依るのかもしれませんが、響きはやや硬め。そして、訥々とした雰囲気が感じられもします。何と言いましょうか、浮遊感のあるラヴェル演奏というよりも、実在感の強い演奏となっている。
そのうえで、ラヴェルの音楽に必要不可欠とも言える色彩感の表出が見事。終曲の「スカルボ」などでは、躍動感にも不足はありません。
そして、これは全編を通じて言えることなのですが、決して軽々しい演奏ではないながらも、軽妙さが感じられる。いや、精妙であると言った方が相応しいかもしれません。この作品ならではの「妖しさ」が感じられもする。そんなこんなによって、凛としていて、かつ、瀟洒な雰囲気の漂っている音楽が響き渡ることとなっている。
詩的で感覚的であるとともに、頗る緻密であり、更には毅然とした音楽づくりの為されている演奏。懐の深さや、奥行きの深さが感じられもする。その結果、音楽から何とも言えない巨大なオーラのようなものが発せられているかのよう。
強い説得力を持った、なんとも魅力的なラヴェル演奏であります。