デュトワ&モントリオール響によるドビュッシーの≪映像≫を聴いて

デュトワ&モントリオール響によるドビュッシーの≪映像≫(1988年録音)を聴いてみました。

色彩感に富んでいて、力感に満ちており、かつ、エレガントな演奏となっています。お洒落な感覚に溢れていて、洗練の極みをゆく音楽が鳴り響いているとも言えそう。
その様は、実に美しい。
いつもの「デュトワ・マジック」が示されているのだと言えばそれまでなのですが、やはり、このような演奏を繰り広げてくれるのは、驚異的なことだと言えましょう。しかも、音に浮遊感がありつつも、決して「夢うつつ」な音楽世界が広がってゆく訳ではなく、現実味を帯びた音楽が鳴り響いている。そう、充分にエキサイティングな演奏となっているのであります。音楽そのものが生き生きとした弾力性を帯びているとも言いたい。「イベリア」では、異国情緒をたっぷりと漂わせながら、躍動感に満ちていて、音楽が存分にうねっている。それでいて、力づくなところは皆無で、格調高くもある。

「美」と「動」とが絶妙なバランスの上に成り立っている演奏だと言えるのではないでしょうか。いや、バランスというよりも、両者が溶け合った上で存在している演奏だと言った方が良いかもしれません。
そんなこんなによる、センス抜群な演奏。
作品の魅力にドップリと身を浸すことのでき、かつ、デュトワの魅力を堪能することのできる、なんとも素晴らしい演奏であります。