シャイー&ナショナル・フィルによるヴェルディの序曲集を聴いて

シャイー&ナショナル・フィルによるヴェルディの序曲集(1982年録音)を聴いてみました。収められているのは、下記の7つのオペラの序曲になります。
≪運命の力≫
≪アロルド≫
≪ナブッコ≫
≪シチリア島の夕べの祈り≫
≪ジャンヌ・ダルク≫
≪オベルト≫
≪ルイザ・ミラー≫
ヴェルディの音楽に必要不可欠な、エネルギッシュでドラマティックな感興を備えている演奏となっています。とは言うものの、赤裸々なまでに激情的であったり、煽情的であったり、ということはありません。途方もないほどの爆発力を秘めている、ということもない。それよりももっと、理性的な演奏になっている。
そのうえで、音楽がしなやかに息づいています。流麗な演奏ぶりだと言えましょう。そして、明朗な音楽が鳴り響いている。イタリアオペラならではの歌心にも不足はない。
更には、小気味良さを備えている。音楽が存分に躍動してもいる。そのような音楽づくりの中から、ヴェルディオペラのドラマ性が浮かび上がってくる、といった演奏になっています。とてもクリアでもある。
美麗にして、明晰で端正なヴェルディ演奏。そんなふうに言えるのではないでしょうか。それ故に、私にとっては、感情を昂らせながら聴いてゆくというよりも、ジックリと耳を傾けながら聴き進んでゆく、といった序曲集になっています。
ユニークな魅力を湛えているヴェルディ演奏。しかも、ヴェルディ音楽に触れる歓びを十分に湛えている。そんな序曲集であります。





