ティボー&コルトーによるフランクとドビュッシーとフォーレのヴァイオリンソナタ集を聴いて

ティボー&コルトーによるフランクとドビュッシーとフォーレのヴァイオリンソナタを集めたCD(1929,27年録音)を聴いてみました。
フォーレは、ヴァイオリンソナタ第1番が演奏されています。

このコンビならではの、甘美で、かつ、気品に満ちた演奏となっています。詩情豊かであり、滴り落ちるようなロマンティックな薫りが感じられる。
と言いつつも、必要以上に甘ったるい演奏になっている訳ではありません。音楽のフォルムが崩れるようなこともない。凛とした佇まいをしている。とても高潔でもある。媚びを売るようなところが全くなく、ある種、超然とした音楽世界が広がっているとも言いたい。
そのような演奏ぶりを基調としながら、それぞれの作品に相応しい性格が与えられています。
フランクでは、凝縮度の高い演奏が繰り広げられています。しかも、十分にエネルギッシュ。熱くて、逞しい演奏ぶりが示されている。至る所で音楽の「うねり」が感じられもする。そのうえで、頗る玄妙な音楽が鳴り響くこととなっている。
ドビュッシーでは、なんとも精妙な演奏が展開されています。繊細でありつつ、明晰でもある。透徹した音楽となっている。そのうえで、艶やかさをベースにしながら、色彩の移ろい、といったものが丹念に描き出されていると言いたい。しかも、とても夢幻的である。
フォーレは、思いのほか情熱的な演奏となっています。それでいて、やはりと言いましょうか、エレガントであり、滋味深い音楽が鳴り響いている。包容力がある、とも言えましょうか。熱くありつつも、柔らかみを帯びている。その辺りが、いかにもフォーレの作品に相応しい。

なんとも趣深くて、見事な演奏。そして、この3つの作品が持つ個性を通じて、ティボーとコルトーの魅力を存分に味わうことのできる演奏が刻まれている。
そんな妙味に富んだ音盤であります。