シューリヒト&バイエルン放送響によるメンデルスゾーンの≪真夏の夜の夢≫抜粋版を聴いて

シューリヒト&バイエルン放送響によるメンデルスゾーンの≪真夏の夜の夢≫抜粋(1960年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。
ここでは、序曲も含めて8つのナンバーが収められています。収録時間は35分ほど。

シューリヒトは、時に枯淡な演奏を繰り広げることもありますが、ここでは明朗な音楽づくりがなされています。躍動感があり、快活な演奏が展開されている。
とは言いましても、無邪気に跳ね回るような演奏ぶりではありません。それよりももっと、落ち着いた振る舞いが為されている。そして、慈愛に満ちた演奏になっていると言いたい。暖かみを帯びてもいる。
しかも、曖昧なところがなく、筆致は克明。キッチリカッチリとした演奏ぶりが示されています。それでいて、硬直した音楽になるようなことはなく、メンデルスゾーンの音楽に相応しい弾力性や、優美さや、といったものが備わっているのが、なんとも尊いところ。
そんなこんによって、この作品ならではのメルヘンな音楽世界が、趣き深く広がってゆくこととなる。

一聴すると何気ない演奏に思えるかもしれませんが、奥深さのようなものが滲み出ている音楽となっている。その辺りが、いかにもシューリヒトらしいところ。
独特な魅力を備えていて、かつ、身構えることなく作品の世界に入り込むことのできる、素敵な≪真夏の夜の夢≫であります。