ベーム&シュトゥットガルト放送響によるヒンデミットの≪ウェーバーの主題による交響的変容≫を聴いて

ベーム&シュトゥットガルト放送響によるヒンデミットの≪ウェーバーの主題による交響的変容≫(1951年ライヴ)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

ベームが、1951年から、この世を去る2年前となる1979年までの28年の間に、シュトゥットガルト放送響に客演した際のライヴ録音が収録されている6枚組のCDの中の1枚になります。
ベームによるヒンデミットの音盤はとても珍しく、正規録音は無かったのではないでしょうか。

さて、ここでの演奏はと言いますと、覇気の漲ったもの。ベームは50代の後半で、指揮者として壮年期を迎えていた時期のものと言え、逞しい生命力を湛えているものとなっています。メリハリが効いていて、立体的であり、目鼻立ちがクッキリとしている。輪郭がクリアでもある。
そのうえで、シッカリとした構成力を持った、堅固な演奏が繰り広げられている。
そのような演奏ぶりによって、ヒンデミットならではの、シニカルでありつつシリアスであり、諧謔的でもある、といった性格が、誇張されることなく、クッキリと浮かび上がっています。なおかつ、ある種の謹厳さを湛えてもいる。
更には、十分にエネルギッシュでもある。その一方で、第3曲では、抒情的な美しさが滲み出ている。
そんなこんなによって、鬱屈となるようなことなく、この作品の音楽世界に身を置くことのできる演奏となっている。

壮年期のベームならではの特質を備えている、聴き応え十分な、素晴らしいヒンデミット演奏であります。