ヴァント&ミュンヘン・フィルによるブルックナーの交響曲第9番を聴いて

ヴァント&ミュンヘン・フィルによるブルックナーの交響曲第9番(1998年ライヴ)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

演奏時間は63分ほど。収録時間は64分強でありますが、終演後の拍手が1分ほどにわたって収められています。
遅めのテンポで、どっしりとした音楽づくりが示されています。そのうえで、逞しくて、芯のシッカリとした音楽が鳴り響いている。適度に強靭でもある。
しかも、演奏全体から暖かみやふくよかさが感じられます。この点については、ミュンヘン・フィルが相手であることから生まれたものなのでありましょう。
更に言えば、質実剛健な音楽が奏で上げられています。飾り気がなくて、実直でもある。それでいて、ヴァントならではの、推進力に満ちた覇気の漲っている演奏となってもいる。明朗にして、壮健な音楽が鳴り響いている。
これらの特質については、大注目を浴びることとなった、2000年の北ドイツ放送響との来日公演をライヴ録音したものよりも、当盤の方でより顕著に窺えます。
(あの東京ライヴ盤は、強靭さや、息遣いの豊かさや、逞しい推進力といったものが、あまり感じ取ることのできない演奏となっていた。)

滋味深く、しかも、大袈裟でない範囲での壮麗さも備わっている演奏。自然な息遣いの中に、スケールの大きさが感じられるのであります。聴き手を包み込む包容力の豊かさが感じられもする。
ヴァントの美質がクッキリと滲み出ている、なんとも素敵な演奏であります。