マリス・ヤンソンス&ピッツバーグ響によるショスタコーヴィチの交響曲第8番を聴いて
マリス・ヤンソンス&ピッツバーグ響によるショスタコーヴィチの交響曲第8番(2001年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。
マリスは、1988年から2005年までの17年を掛けて、サンクト・ペテルブルク・フィル、ベルリン・フィル、ウィーン・フィル、バイエルン放送響、フィラデルフィア管、オスロ・フィル、ロンドン・フィル、そして、ここでのピッツバーグ響と、8つのオケを振り分けながらショスタコーヴィチの交響曲全集を完成させていますが、ピッツバーグ響との録音は、この第8番のみとなっています。
さて、ここでの演奏はと言いますと、真摯で端正なものとなっています。
この、異形なスタイルをしている辛辣でシニカルで怪異な雰囲気に包まれた作品を、実直な姿勢で「音」にしてゆくマリス。全体的にスッキリとしていて、見通しの良い演奏が繰り広げられている。
なるほど、ムラヴィンスキーが示したがごとき、強迫観念を抱かされるような「脅威」は薄いかもしれません。それよりももっと、折り目正しくて、スマートな演奏となっている。ピュアだとも言えそう。それでいて、この作品の込められている「熱量」は、シッカリと表されている。
純音楽的な演奏。更には、ニュートラルな感覚を備えている演奏だとも言えそう。ここで、ピッツバーグ響が起用されていることが、そのようなニュートラルな音楽づくりを、より一層促しているように思えます。そして、ピッツバーグ響の機能性の高さや、反応の鋭敏さや、といったものも見事。
作品の魅力を等身大な姿で味わうことのできる、立派な、そして、素敵な演奏。そんなふうに言いたくなる演奏であります。