フリッチャイ&RIAS響によるシューマンの≪春≫を聴いて
フリッチャイ&RIAS響によるシューマンの≪春≫(1955年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音源での鑑賞になります。
キリっと引き締まっている演奏であります。とても筋肉質。そのうえで、運動性が高くて、キビキビと運ばれてゆく。
そのような演奏ぶりによって、端正で格調が高く、かつ、朗らかな音楽世界が広がることとなっています。それはあたかも、澄み切った空気に包まれながら、暖かな陽光が降りそそいでいる春の光景、といったところ。
フリッチャイらしい厳格な音楽づくりが施されていつつも、堅苦しさは感じられません。むしろ、心弾む音楽が鳴り響いている。それは、躍動感に満ちていて、活き活きとした表情を湛えていて、音楽の息遣いが伸びやかであるが故なのでしょう。気宇の大きさを備えていつつも、小気味よくもある。凝縮度が高いながら、十分に開放的でもある。そのような、一見、相反すると思えるような要素が矛盾なく並立し得ているところが、フリッチャイの偉大さであると言えましょう。
フリッチャイの芸の深さを痛感しながら、作品の魅力も存分に味わうことのできる、素敵な演奏であります。