チョン・ミョンフン&パリ・バスティーユ管によるメシアンの≪彼方の閃光≫を聴いて

チョン・ミョンフン&パリ・バスティーユ管によるメシアンの≪彼方の閃光≫(1993年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

当盤は、チョンが40歳の時に録音されたもの。パリ・バスティーユ管(すなわち、パリのオペラ座)の音楽監督に就任したのが1989年のことでしたので、それから4年が経った時点での演奏となります。

この曲は、メシアン(1908-1992)にとっては最後の管弦楽作品となったもの。1991年に完成された、60分を超える大作であります。
その音楽はと言いますと、敬虔な世界や静謐な世界や、鳥のさえずりを材料とした原色的で賑やかな世界や、更には、強迫めいた世界や、といったようなものが交錯するものとなっています。そう、シリアスでいて、カラフルな音楽が繰り広げられてゆく。
チョンは、最晩年のメシアンから直接指導を受けていますが、ここでの演奏は、確信に満ちたものになっていると言えるのではないでしょうか。力強くて、かつ、抒情性に溢れたものとなっています。明晰でもある。そして、とても生き生きとしている。メシアンならではの、色彩感にも溢れている。
総じて、頗る精妙な音楽が鳴り響いています。感覚的な美しさに満ちてもいる。しかも、とても親しみやすい。
そのような演奏ぶりによって、メシアンが描き上げていった音楽世界に、ス~っと引き込まれてゆく。

メシアンの魅力を存分に味わうことができる演奏だと言えましょう。とても的確で、かつ、生彩感のある演奏になっている。
それと同時に、若きチョンの音楽センスの高さが刻まれている演奏だとも言えるように思えます。