シャイー&コンセルトヘボウ管によるR=コルサコフの≪シェエラザード≫を聴いて

シャイー&コンセルトヘボウ管によるR=コルサコフの≪シェエラザード≫(1993年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

ヴァイオリン独奏は、現在は指揮者として活動しているズヴェーデン。録音当時はコンセルトヘボウ管のコンマスだったのであります。
シャイーにしては、ちょっと抑えめな演奏だと言えるのではないでしょうか。大仰な素振りを見せるようなことは、決してない。ゴージャスな音楽づくりを誇示したり、煌びやかに仕立てていったり、といったようなこともない。そのようなこともあり、絢爛豪華な音楽絵巻が展開されているというよりは、風格豊かで、かつ、抒情的でしっとりとした音楽が鳴り響いています。
テンポは概して遅め。そのことがスケールの大きさを生み出しているとともに、克明な音楽世界を描き上げることに寄与する方向に傾いているようにも思えます。4つの楽章の中では、最も起伏の激しくて、かつ、壮麗な演奏が繰り広げられている最終楽章においても、決してアクロバティックなものにはなっていない。
聴き手が≪シェエラザード≫という作品に望みがちな「興奮」は希薄だと言えるかもしれません。その一方で、コンセルトヘボウ管のコクの深い美音と、卓越した合奏力も相まって、シルクのような肌触りの感じられる、ユニークな魅力を宿した≪シェエラザード≫を味わうことのできる演奏となっている。
ズヴェーデンによるヴァイオリン・ソロは、しっとりとしていつつも、なかなかに情念的。そのようなソロが、この演奏に、面白いアクセントを付けてくれているように思えます。

このような形で≪シェエラザード≫を楽しむのも、なかなかに趣深いものだと言いたい。