マルケヴィチ&ロンドン響によるチャイコフスキーの≪冬の日の幻想≫を聴いて

マルケヴィチ&ロンドン響によるチャイコフスキーの交響曲全集から≪冬の日の幻想≫(1966年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。
マルケヴィチならではの、明晰にして、鋭利な演奏が繰り広げられています。
リズミックな音楽づくりで、躍動感に満ちている。エネルギッシュで、ドラマティックでもある。そのうえで、とてもクリアで、目鼻立ちがクッキリとしている。キリっと引き締まったフォルムをしていて、凝縮度が高くもある。
やるべきことをキッチリとやり尽くしていると言えそうで、曖昧な点は一切ありません。しかも、生命力に溢れている。なるほど、エッジが立っているのですが、エキセントリックであったり攻撃的であったり、といった要素は微塵も感じられず、表情は生き生きとしている。この作品が持っている生命力が沸き立ってくるような演奏だとも言いたくなる。
そのようなこともあって、決してドライな音楽になっていません。明晰な演奏ぶりをベースにしながら、十分なる熱量を蓄えた音楽が鳴り響くこととなってもいる。
更に言えば、とても立体的でありつつ、全体的に洗練味が感じられもする。客観性に満ちていつつも、チャイコフスキーならではのロマンティックな味わいにも不足はない。
総じて、音楽を純粋な形で楽しむこともできる演奏となっていると言えましょう。なおかつ、ピュアで、かつ、求心力の強い演奏だとも言えそう。
実に見事な、そして、頗る魅力的な演奏であります。





