ウェルザー=メスト&ロンドン・フィルによるストラヴィンスキーの≪火の鳥≫全曲を聴いて
ウェルザー=メスト&ロンドン・フィルによるストラヴィンスキーの≪火の鳥≫全曲(1993年録音)を聴いてみました。
1960年生まれのW=メストは、30歳を迎える年にロンドン・フィルのシェフに就任していますが、その2年後に録音された当盤。
その内容はと言いますと、瑞々しい感性を湛えていて、かつ、端正でもある秀演だと言えましょう。端麗にして折り目正しく、それでいて、生命力に溢れていて、十分に色彩的でもある演奏が繰り広げられています。
まずもって、全体的にとてもスッキリとした音楽が奏で上げられています。凶暴さが微塵もなく、洗練味に溢れている。清明でもある。
その一方で、力感に溢れてもいて、ドラマティックでもある。動きが機敏で、躍動感にも不足はありません。
しかも、流れに淀みがなく、かつ、音の混濁もなく、磨き上げが丹念で、音からは光輝が感じられる。
そんなこんなによって、なんとも美しい≪火の鳥≫になっています。生気に満ちていて、晴朗で、かつ、凛々しくもある。
更に言えば、尖鋭に過ぎたり、エキセントリックであったり、といったことも一切ない。それゆえに、端正なストラヴィンスキー演奏になっているのだと言いたい。
W=メストの音楽性の豊かさが発揮されている、なんとも魅力的な≪火の鳥≫。そんなふうに言えるのではないでしょうか。