シノーポリ&シュターツカペレ・ドレスデンによるベルクの≪ヴォツェック≫から3つの断章 と≪ルル≫組曲を聴いて

シノーポリ&シュターツカペレ・ドレスデン(SKD)によるベルク集(1997,98年録音)より、下記の2曲を聴いてみました。ソプラノ独唱はマルク。
≪ヴォツェック≫から3つの断章
≪ルル≫組曲
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

精細で、かつ、緊密な演奏となっています。そして、とても美しい。
なんとも精妙な音楽が鳴り響いています。
見通しが良くて、スッキリと纏められている。更には、繊細で、抒情的でいて、しかも、精彩感がある。それも、決してケバケバしかったり、ドロドロしていたり、といったようなことはなく、清潔感の漂う音楽が鳴り響いている。キリっとした表情を湛えてもいる。そして、決して冷徹な音楽にはなっていない。
これらの印象は、シノーポリの音楽づくりもさることながら、SKDの体質に依るところが大きいのではないでしょうか。そう、このオケの美質である「格調の高さ」や、ピュアな美しさを湛えた響きが、この演奏にも強く反映されているように思えるのです。
そのうえで、シノーポリは、精緻にして、必要十分に逞しい音楽づくりを繰り広げている。適度にドラマティックでもある。そして、繰り返しになりますが、冷酷ではなく、血の通った音楽が展開されている。
しかも、ベルクの音楽に相応しい緊張感も、過不足なく備わっている。その先にある「優しさ」のようなものも、シッカリと感じられる。
また、マルクは、豊麗で恰幅の良い歌いぶりでありつつも、透徹した歌唱を繰り広げていて、ここでのシノーポリ&SKDの演奏に相応しい。

美感に満ちた、見事なベルク演奏。
なんとも素敵な演奏であります。