ケルテス&ロンドン響によるブルックナーの≪ロマンティック≫を聴いて

ケルテス&ロンドン響によるブルックナーの交響曲第4番≪ロマンティック≫(1965年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

ケルテスには珍しいブルックナーの録音。セッション録音されたのは、これが唯一になります。
その演奏はと言いますと、頗る清新なものとなっています。清冽だとも言えそう。
概して速めのテンポで進められて、音楽が粘るようなことは殆どありません。例えば、一つのモチーフがひと段落する際に、他の多くの演奏ではテンポを落としながら詠嘆するかのようにして次に進むような箇所でも、ケルテスはそのような処置を施さない。毅然とした態度で、スパッ、スパッと音楽を奏で上げてゆく。その様は、誠に潔い。厚化粧が施されていないブルックナー演奏だとも言えそう。そのようなこともあって、胸がすく演奏となっている。
かと言って、音楽がサバサバと流れて行っている訳ではありません。例えば、第1楽章で展開部に入って直後の辺りなどでは、目鼻立ちが鮮やかで、峻烈な音楽が奏で上げられている。また、緩徐楽章は、さほど速いテンポは採られていなくて、粘り気の生じない範囲でシッカリと歌い抜いている。そして、ここでも目鼻立ちのクッキリとした音楽が鳴り響いている。
なおかつ、全体を通じて、立体感のある演奏となっている。端然とした姿をしてもいる。そのうえで、純音楽的な美しさを湛えたものとなっている。
更に言えば、流麗さと克明さが同居していて、そのうえで清々しくもある、スッキリとした佇まいをしたブルックナー演奏となっている。清涼感が漂っていて、しかも、明朗でもある。そのような演奏ぶりに、作品が寄り添ってくれているようにも思える。

ケルテスならではの魅力に彩られた、ユニークな味わいを持ったブルックナー演奏。このような≪ロマンティック≫も、なかなかに素敵であります。
ちなみに、第1楽章での再現部に入る直前、この楽章で最も盛り上がる箇所で奏で上げられるコラール(練習番号Lの直前)でティンパニが加えられていないのも、この演奏の性格に相応しいように思えます。