ミケランジェリによるショパンのマズルカ集を聴いて

ミケランジェリによるショパンのマズルカ集(1971年録音)を聴いてみました。ドイツ・グラモフォン(DG)に録音したショパン集から、マズルカのみ10曲を聴いてみたのでした。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

凛とした風情を湛えているショパン演奏となっています。
感傷的な色合いは、あまり感じられません。それよりももっと、毅然としていて、キリっとした表情をしている。それでいて、シッカリと哀愁が滲み出ている。
10曲のうち、短調の作品が7曲。なんとも翳の濃い音楽が奏で上げられています。なるほど、繊細にしてナーバスな音楽世界が広がっている。それでいて、決してひ弱な音楽にはなっていない。凛々しい表情をしている。
その一方で、長調の3曲では、壮健で、意気軒昂とした音楽が鳴り響いています。ある種の強靭さを秘めてもいる。とは言うものの、力で抑え込もうとしたり、粗暴になったり、といったことは皆無。超然とした力強さ、と言ったようなものが感じられる。
そんなこんなのうえで、全編を通じて、素朴さといった性格は薄く、なんとも薫り高い音楽が響き渡っています。精妙な演奏になっているとも言いたい。そして、ピュアな美しさを湛えている。

これはもう、ミケランジェリならではのショパン演奏だと言えましょう。しかも、頗る魅力的な演奏となっている。
ミケランジェリによるショパンは、話題になることがあまり多くないように思われる中で、DGに正規録音されたこの音盤は、とても貴重なもの。多くの音楽愛好家に聴いてもらいたい、素敵な素敵な音盤であります。