クレメンス・クラウス&バイエルン放送響によるハイドンの≪V字≫と交響曲第93番の2曲を聴いて

クレメンス・クラウス&バイエルン放送響によるハイドンの≪V字≫と交響曲第93番(1953年録音)を聴いてみました。

凛としていて、格調の高い演奏となっています。とても典雅でもある。
しかも、優美で、情緒豊かなのですが、情に流されて音楽のフォルムが崩れるようなところは一切ありません。急速楽章では速めのテンポを基調とした、引き締まった音楽づくりがなされている。輪郭線が明瞭で、目鼻立ちがクッキリとしてもいる。そして、キリッとした表情をしている。その一方で、緩徐楽章ではゆったりとしたテンポを採りながら、旋律を連綿と歌い上げていて、暖かみや優しさに満ちた音楽が鳴り響いている。両者の振り幅は誠に大きいのですが、そこにはわざとらしさが微塵も感じられない。作品への愛情が、もっと言えば、音楽への愛情が、滲み出ているような演奏となっている。
そのうえで、頗る気品のある演奏となっている。甘美な空気が立ち込めてくるような演奏でもある。そして、ハイドンならではの親しみやすさにも全く不足がなく、ウィットに富んだ音楽となっています。
それもこれも、クラウスの人間性の豊かさが反映されているが故のことなのでありましょう。

なんとも見事な、そして、抗しがたい魅力を備えている、飛び切り素敵な演奏であります。