ギーゼキングによるドビュッシーの≪子供の領分≫組曲と≪ベルガマスク≫組曲を聴いて
ギーゼキングによるドビュッシーの≪子供の領分≫組曲と≪ベルガマスク≫組曲(1951,53年録音)を聴いてみました。
端正な佇まいをしている演奏であります。
音の粒がクッキリとしていて、明瞭な音楽が作られている。感情に流されるようなことはなく、客観性が高くもある。そう、ある意味、冷徹な演奏であると言えましょう。
それでいて、冷たい訳ではありません。むしろ、音楽全体から暖かみが感じられる。画一的な演奏にもなっていない。音楽は自由に伸縮し、自然な息遣いをしている。とは言うものの、奔放ではない。それは、知性を裏付けとした自在さ、とでも呼べば良いでしょうか。
そのような音楽づくりをベースにしながら、ドビュッシーが音楽に込めた「音の移ろい」を、丹念に、かつ明晰に描き上げられてゆく。しかも、必要に応じて、強靭なタッチを繰り出したりもする。或いは、鮮やかに音楽を疾駆させたりもする。精妙かつ繊細で、それでいて雄弁なドビュッシー演奏。
そんなこんなの結果として、頗る客観性が高くて、明瞭な演奏ぶりでありつつも、詩情性の滲み出てくる演奏となっている。サラッとしているようで、奥行きの深さのようなものを備えている演奏だとも言いたい。そして、とても凛然としている。
いやはや、なんとも見事な演奏であります。
そのうえで、ドビュッシーの音楽世界にグッと引き込まれてゆく、素敵な素敵な演奏であります。