デ・ブルゴス&フィルハーモニア管によるファリャの≪三角帽子≫全曲を聴いて
デ・ブルゴス&フィルハーモニア管によるファリャの≪三角帽子≫全曲(1963,64年録音)を聴いてみました。ソプラノ独唱はロス・アンヘレス。
≪三角帽子≫はもともとが、原色系の色彩を帯びていて、煽情的な雰囲気に包まれた作品であると思うのですが、この演奏はとりわけそのような要素が強い。刺激的かつ妖艶で、生命力に溢れた演奏となっています。頗る鮮烈でもある。
リズム感が冴え渡っていて、エッジも程よく効いていて、誠に心地よい。ダイナミックで、ドラマティックな演奏が繰り広げられています。音楽全体が、弾けまくっている。眩いばかりの光が発せられている。そして、「終幕の踊り」の高揚感は、まさに興奮もの。
それでいて、洗練されていて知的でもある。そう、知情のバランスが見事なのです。オケの響きも、必要以上に豊満にならずに、適度に引き締まっている。(それでも、どちらかと言えば「豊満系」なのでありますが。)
そのような中に、ロス・アンヘレスの魅惑的な歌が加わる。彼女のここでの歌は、気品がありながら、適度な「情念」も感じさせてくれるものとなっている。これまた、知情のバランスが抜群だと言えましょう。
華があって、音楽的なセンスが高くて、聴いていてウキウキしてくる、そんな素敵な演奏であります。
この演奏は、私にとっては、≪三角帽子≫を聴きたくなったときに真っ先に思い浮かべるものの一つ(その対抗馬は、アンセルメ盤だったり、デュトワ盤だったりする)。
スペイン生まれのデ・ブルゴス(1933-2014)の代表盤と評価されることもあって、1980年代辺りまでは、この盤の評判を耳にする機会も多かったように覚えていますが、最近は、あまり話題に上らなくなったように思えます。
≪三角帽子≫の魅力にタップリと浸ることのできる演奏として、多くの音楽愛好家に広く聴いてもらいたい1枚であります。