シャイー&ルツェルン祝祭管によるストラヴィンスキーの≪春の祭典≫を聴いて

シャイー&ルツェルン祝祭管によるストラヴィンスキーの≪春の祭典≫(2017年ライヴ)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

シャイーは2016年にルツェルン音楽祭の音楽監督に就任し、この音盤には、その2年目に開かれた演奏会のライヴが収められています。

さて、ここでの演奏はと言いますと、とても鮮烈なものとなっています。誠に鋭敏で、躍動感やスピード感に満ちてもいる。克明で、解像度の高い演奏だとも言えそう。
しかも、歌心に満ちてもいる。それはもう、冒頭のファゴットソロからして。そのようなこともあって、過度にシャープな音楽となることはなく、まろやかさの感じられる演奏となっています。シャイーによる≪春の祭典≫では、シャープさにおいては、1985年にクリーヴランド管と録音した旧盤のほうに軍配を上げるべきでありましょう。
更に言えば、なんとも劇的な演奏となっている。力感に溢れてもいる。とは言え、決して野蛮な音楽になってはいません。空騒ぎに過ぎなかったり、ただ単に聴き手の感情を煽るものであったり、といった演奏にもなっていない。音楽をシッカリとコントロールしながら、ゆとりをもって音楽を掻き鳴らしている。そして、洗練味が備わってもいる。そこからは、風格のようなものが感じられもする。

知情のバランスに優れている演奏。そのうえで、この作品の魅力を存分に味わうことのできる演奏となっている。
シャイーの円熟味のようなものが感じられつつも、生彩感も十分な、なんとも見事な演奏であります。