マゼール&ウィーン・フィルによるストラヴィンスキーの≪春の祭典≫を聴いて

マゼール&ウィーン・フィルによるストラヴィンスキーの≪春の祭典≫(1974年録音)を聴いてみました。

ウィーン・フィルによる初めての≪春の祭典≫の録音ということで、大いに話題を呼んだ音盤であります。そして、セッション録音によるものとしては、今でもこれがウィーン・フィルにとって唯一の≪春の祭典≫となっている。

さて、ここでのマゼールによる音楽づくりはと言いますと、とても起伏に富んだものとなっています。才気に溢れたものだとも言えましょう。
曲想に応じてのコントラストをくっきりと付けながら、バーバリズムに溢れた音楽を奏で上げてゆく。時にオーケストラを思いっきり咆哮させてゆく。時に、がむしゃらに突っ走ってゆく。時に、瞑想的な音楽を鳴り響かせたりもする。そう、とても鮮烈で凄絶で、ドラマティックにして多彩な表情を湛えた演奏が繰り広げられているのであります。
その一方で、ウィーン・フィルは、いつもの彼らの美感をいささかも損ねない響きを保持しながら、マゼールの指揮に応えています。ここでのマゼールの演奏ぶりは、鋭利な音楽を志向したものだと言えましょうが、ウィーン・フィルの柔らかで丸みを帯びた響きによって、音楽にまろやかさが与えられている。もっと言えば、馥郁とした薫りの漂う≪春の祭典≫となっている。

マゼールの美質が存分に発揮されていて、そこにウィーン・フィルの美質が加わるという、この組合せだからこその演奏が繰り広げられている≪春の祭典≫。
他の演奏からは得難い魅力を、しかも、ふるいつきたくなるほどの魅力を宿している、素晴らしい≪春の祭典≫であります。