アンネローゼ・シュミット&マズア&ドレスデン・フィルによるウェーバーの≪コンツェルトシュトゥック≫を聴いて

アンネローゼ・シュミット&マズア&ドレスデン・フィルによるウェーバーの≪コンツェルトシュトゥック≫(1969年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

A・シュミットとマズアは、旧東ドイツを拠点に活動していた音楽家で、モーツァルトのピアノ全集を完成させているなど、数多くの音盤を共同制作していました。
さて、ここでのA・シュミットによるピアノからは、派手さは全く感じられません。誠実さの滲み出ている音楽づくりが為されている。
しかも、音は慎ましくも、可憐な美しさがある。格調の高いピアノ演奏が繰り広げられています。この作品に相応しい流麗さや屈託の無さを備えてもいる。
そして、優しさが感じられる。そのうえで、まろやかでもある。気取ったところがなく、何もかもが自然で、親しみ深い。
と言いつつも、適度に逞しく、芯のシッカリとした音楽が奏で上げられています。
そのようなA・シュミットをバックアップしているマズアもまた、凛とした音楽を奏で上げてくれています。それでいて、適度に重厚でもある。ドッシリと構えていて、安定感が抜群。しかも、過度に重苦しくなるようなことはなく、この作品に相応しい可憐さを備えている。

気心の知れた間柄のA・シュミットとマズア。マズアの準備するキャンバスの上で、思いのままに羽ばたいてゆくA・シュミットの姿を、ここに見るかのようであります。
この2人の演奏家の美質と、この作品の魅力とがシッカリと刻まれている、素敵な素敵な演奏であります。