ライナー&シカゴ響によるR=コルサコフの≪シェエラザード≫を聴いて

ライナー&シカゴ響によるR=コルサコフの≪シェエラザード≫(1960年録音)を聴いてみました。

なんとも剛毅な演奏が繰り広げられています。それはまさに直球勝負。豪快にグイグイと押してくる演奏ぶりだと言えましょう。
実にダイナミックで、強靭な演奏となっている。
しかも、頗る巧緻。輪郭線がクッキリとしていて、どこにも曖昧なものが見当たらない。仕上げが丹念な演奏となっています。
このような演奏に接していると、演奏家としての「義務感」に駆られて、誠実に演奏を繰り広げていった結果が、今、我々の前に提示されているのだ、といったふうな感慨が込み上げてきます。
そのようなこともあり、全くこけおどしな音楽にはなっていません。芝居がかった演奏が展開されている、といったこともありません。なんとも真摯で、かつ、内実がぎっしりと詰まっている音楽が、終始響き渡っている。
そのうえで、ダンディーな華麗さ、と言いたくなるようなものが備わったものとなっている。その気風の良さには、清々しささえ感じられます。そして、この作品に不可欠とも言える絢爛豪華さも充分。頗る輝かしい演奏となっている。
更に言えば、最終楽章での船の難破の描写などは、他の演奏で体験できる以上に写実的に思え、克明でリアルで、真に迫った音楽となっている。
そのようなライナーの音楽づくりを支えているシカゴ響の巧さにも、惚れ惚れとしてきます。

ライナー&シカゴ響の本領が発揮されていると言えそうな、唖然とするほどに見事で、かつ、頗る魅力的な演奏であります。