ユボー&ヴィア・ノヴァ四重奏団によるシューマンのピアノ五重奏曲を聴いて
ユボー&ヴィア・ノヴァ四重奏団によるシューマンのピアノ五重奏曲(1979年録音)を聴いてみました。
エラート・レーベルが1970年代の後半に制作したシューマンの室内楽曲全集の中の1枚になります。
この作品は、熱くなろうと思えば、いくらでも熱くなれる「魔性の音楽」と言えるのではないでしょうか。情熱が、あちこちで迸っている。狂気に満ちているとも言いたい。そして、音楽がうねりにうねってゆく。その象徴が第2楽章の中間部のAgitatoであり、最終楽章の319小節目以降の壮大なフガートであろうと思っています。
1998年の別府アルゲリッチ音楽祭で接した実演などは、まさに作品そのものが沸騰していたといった感じで、誠に煽情的でありました。
そこへいきますと、ユボーとヴィア・ノヴァSQによる演奏では、節度を持った音楽が奏で上げられてゆく。燃え滾るようなテンペラメントを期待すると肩透かしを喰うかもしれません。エネルギッシュというよりも、端正であって、エレガントな演奏が展開されている。そして、格調が高い。
と思いながら聴いてゆくと、楽章を追うごとに熱を帯びてくる。第3楽章では、随分と熱くなっており、焦燥感の募る音楽が展開されることとなっています。そして、炎の塊のような最終楽章が続く。そこではまさに、恍惚感の高い音楽が鳴り響いている。
聴いていて、なんと素敵な作品なのだろう、という思いが込み上げてきます。しかも、この演奏で聴くと、奥行きの深さといったものが感じられる。
大好きな作品であるシューマンのピアノ五重奏曲。その魅力を堪能することのできる、素敵な素敵な演奏であります。