シェーファーとブーレーズ&アンサンブル・アンサンブルコンタンポランによるシェーンベルクの≪月に憑かれたピエロ≫を聴いて

シェーファーによるソプラノ独唱とブーレーズ&アンサンブル・アンサンブルコンタンポランによるシェーンベルクの≪月に憑かれたピエロ≫(1997年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

この顔ぶれによる≪ピエロ≫の実演には、2001年1月にパリのシャトレ座劇場で接することができています。その公演での印象はと言いますと、シェーファーの歌唱が唖然とさせられるほどに素晴らしかった、というもの。
それこそ、何かに取り憑かれたように作品の世界に没入していた、あの時のシェーファー。しかも、極めて内省的な歌いぶりとなっていた。その演奏から感じられたのは、「シェーファーは聴衆のために歌っているのではない。自分のために歌っているのだ」ということでありました。

この音盤での演奏も、実演で聴いたシェーファーの歌いぶりを彷彿とさせます。鋭い感性で、作品の奥底に切り込んでゆこう、といった意思が感じられる。そして、緊張度が高くて、没入感が強い。
しかも、劇性が強く、それでいて、音楽づくりが明晰でもある。頗る精妙な音楽が鳴り響いてもいる。
この辺りは、ブーレーズの指揮にも当てはまりましょう。そのうえで、緻密で透明度の高い音楽づくりが為されている。そういった点では、ブーレーズはまさに、シェーファーの共演者としては最適だと言えましょう。逆もまた然りで、ブーレーズによる≪ピエロ≫の共演者として、シェーファーはまさに最適だと思えてならない。
そのような2人によって描き出された≪ピエロ≫は、凝縮度が高くて、しかも、精緻にして妖しいものとなっている。

シェーファーとブーレーズの魅力を存分に味わうことのできる、素敵な素敵な≪ピエロ≫であります。