ブルネロ&パッパーノ&ローマ聖チェチーリア管によるドヴォルザークのチェロ協奏曲を聴いて

ブルネロ&パッパーノ&ローマ聖チェチーリア管によるドヴォルザークのチェロ協奏曲(2012年録音)を聴いてみました。
NML(ナクソス・ミュージック・ライブラリー)に収蔵されている音盤での鑑賞になります。

ソリストも指揮者もオーケストラも、全てイタリアの血が流れている演奏家たちによるドヴォルザークであります。
(オケのメンバーには、イタリア人以外も含まれてはいるでしょうが。。。)
とは言うものの、イタリア色で染め上げられた演奏だとは言えそうにありません。
なるほど、パッパーノの音楽づくりには、開放的な明るさが感じられ、イタリア的な要素が強いように思えますが、ブルネロによるチェロは、艶やかであるとともに思索的なものとなっています。ストイックでもあり、どことなくマイスキーに相通じるようなキャラクターをしているとも言えそう。
それでいて、やはり、イタリア人ならではの歌心に満ちたものとなっている。そのために、過度に神経質な音楽になるようなことはありません。
はたまた、ブルネロのチェロからは、キリっとしていつつも、恰幅の良さのようなものが感じられもします。そう、決してグラマラスではないのですが、筋肉質な骨格の太さのようなものが感じられるのです。テクニックの切れがありながら、カミソリのような鋭利な音楽づくりを目指すのではなく、むしろ斧で作品に切り込んでゆくような、重みを持った音楽が奏で上げられることとなっている。
そのうえで、例えば第1楽章の第2楽章での演奏ぶりに象徴的なように、デリカシーに富んだ演奏を繰り広げてくれています。或いは、第2楽章の全般において、同じようなニュアンスを帯びている。そのようなことが、ブルネロの演奏ぶりを「思索的」なものにしているのでしょう。
そんなこんなによって、ボヘミア生まれの作曲家としてのドヴォルザークというローカル性は薄く、もっとインターナショナルな感覚を備えた音楽として奏で上げられていると言えそう。更には、既に述べたように、艶やかでもある。
そのようなブルネロに対して、パッパーノの指揮は、明快かつ躍動的で、しなやか。そして、雄渾にしてドラマティックでもある。ブルネロをガッシリとサポートしてくれています。

ユニークな魅力を湛えていて、かつ、聴き応え十分な、なんとも素敵な演奏。そんなふうに言えましょう。

なお、ブルネロは、今年の10月に、下野竜也さん&兵庫芸術文化センター管と同曲を演奏することになっています。
この公演、今から楽しみでなりません。